呼吸器内科

【大阪市の内科】慢性呼吸不全に対する在宅酸素療法(HOT)とは?呼吸器内科医が解説

皆さん、こんにちは。大阪市中央区の内科「谷四かわい内科クリニック」です。

「少し歩くだけで息が切れる」
「動いたときに血液中の酸素濃度が下がる」
「退院後も自宅で酸素を吸うように言われた」

このような場合、慢性呼吸不全に対する在宅酸素療法が必要になることがあります。

在宅酸素療法は、英語のHome Oxygen Therapyの頭文字から、「HOT(ホット)」とも呼ばれています。肺や心臓の病気によって体に必要な酸素を十分に取り込めなくなった方が、ご自宅で酸素を吸入しながら生活するための治療です。

「在宅酸素を始めると、ずっと家で安静にしなければならないのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。

しかし、在宅酸素療法の目的は、患者さんを自宅に閉じ込めることではありません。不足している酸素を補い、息切れや心臓への負担を軽減しながら、できる範囲で日常生活や外出を続けるための治療です。

今回は、慢性呼吸不全と在宅酸素療法の関係、対象となる病気、導入までの流れ、生活上の注意点について、呼吸器内科医がわかりやすく解説します。

慢性呼吸不全とは?

私たちは、呼吸によって肺から酸素を取り込み、血液を通して全身へ酸素を届けています。同時に、体内で作られた二酸化炭素を肺から体の外へ排出しています。

肺や胸郭、呼吸に関係する筋肉などに障害があると、酸素を十分に取り込めなくなったり、二酸化炭素を十分に排出できなくなったりすることがあります。

このような呼吸機能の異常が長く続いている状態を、一般的に慢性呼吸不全と呼びます。

慢性呼吸不全では、主に次のような状態がみられます。

  • 血液中の酸素が不足する
  • 体内に二酸化炭素がたまる
  • 少し動くだけで息切れする
  • 心臓や全身の臓器に負担がかかる
  • 活動量が減り、筋力や体力が低下する

慢性呼吸不全の治療には、原因となる病気への治療に加えて、在宅酸素療法、換気補助療法、呼吸リハビリテーションなどがあります。日本呼吸器学会も、慢性呼吸不全の主な治療としてこれらを挙げています。

参考:日本呼吸器学会|慢性呼吸不全

在宅酸素療法とは?

在宅酸素療法とは、慢性呼吸不全などによって不足している酸素を、自宅や外出先で補う治療です。

自宅に設置した酸素濃縮装置などからチューブをつなぎ、鼻カニューラと呼ばれる細い管を鼻に装着して酸素を吸入します。

酸素濃縮装置は、室内の空気から窒素を分離し、酸素を濃縮して供給する機器です。日本呼吸器学会によると、一般的な酸素濃縮装置では、空気中の酸素を濃縮して約90%の酸素を治療に使用します。

外出するときは、携帯用酸素ボンベや携帯型酸素濃縮装置を使用することができます。

慢性呼吸不全を起こす主な病気

慢性呼吸不全は、一つの病名ではありません。さまざまな肺や心臓の病気が進行した結果として生じる状態です。

在宅酸素療法が必要になる代表的な病気をご紹介します。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDは、主に長期間の喫煙などによって肺に慢性的な炎症が起こり、空気の通り道が狭くなったり、肺胞が壊れたりする病気です。

咳、痰、労作時の息切れなどがみられ、進行すると慢性呼吸不全となり、在宅酸素療法が必要になることがあります。

間質性肺炎・肺線維症

間質性肺炎は、肺の組織に炎症や線維化が起こり、肺が硬くなる病気です。

安静にしているときには酸素濃度が保たれていても、歩行や階段の上り下りなどで酸素濃度が大きく低下することがあります。

病気が進行すると、慢性呼吸不全となり、安静時や運動時に酸素吸入が必要になる場合があります。

肺結核後遺症

過去の肺結核によって肺の一部が壊れたり、胸郭が変形したりすると、十分な換気ができなくなることがあります。

長い年月を経て呼吸機能が低下し、慢性呼吸不全となる場合があります。

気管支拡張症

気管支拡張症は、気管支が広がったまま元に戻りにくくなる病気です。

咳や痰、血痰、肺炎を繰り返すことがあり、肺の障害が進行すると酸素が不足する場合があります。

肺がん・悪性胸水

肺がんによって正常に働く肺が減ったり、胸水がたまったりすると、呼吸機能が低下することがあります。

患者さんの状態や治療方針に応じて、息苦しさや低酸素血症を改善するために在宅酸素療法を行う場合があります。

肺高血圧症・慢性心不全

在宅酸素療法は、肺の病気だけに行う治療ではありません。

肺高血圧症や一部の慢性心不全、先天性心疾患などにより低酸素血症が続く場合にも、在宅酸素療法が必要になることがあります。

息苦しいだけで在宅酸素療法が必要になるわけではありません

在宅酸素療法を導入するかどうかは、息苦しさの強さだけでは判断できません。

強い息苦しさがあっても、血液中の酸素が正常に保たれている場合があります。反対に、ご本人があまり息苦しさを感じていなくても、酸素が不足していることもあります。

そのため、呼吸器内科では症状だけでなく、検査結果を含めて総合的に判断します。

主に行う検査には、次のようなものがあります。

  • パルスオキシメーターによる酸素飽和度(SpO₂)の測定
  • 動脈血ガス分析
  • 歩行時・運動時の酸素飽和度測定
  • 呼吸機能検査
  • 胸部レントゲン検査
  • 胸部CT検査
  • 血液検査
  • 心電図・心臓超音波検査

指先で測定するSpO₂は重要な目安ですが、手の冷え、体動、末梢循環の状態、マニキュアなどによって正確に測定できないことがあります。

また、パルスオキシメーターだけでは、体内に二酸化炭素がたまっているかどうかは判断できません。必要に応じて動脈血ガス分析などを行います。

在宅酸素療法の適応はどのように決まりますか?

在宅酸素療法には、健康保険上の適応基準があります。

日本呼吸器学会の患者さん向け情報では、代表的な目安として、安静時の動脈血酸素分圧が55mmHg以下、または酸素飽和度が88%以下の場合が示されています。

また、動脈血酸素分圧が55mmHgを超えて60mmHg以下の場合でも、睡眠時や運動時に著しい低酸素血症が認められる場合などには、適応になることがあります。

ただし、適応は一つの数値だけで決まるものではありません。

原因となる病気、安静時・運動時・睡眠時の酸素状態、心臓への負担、症状、日常生活の状況などを確認し、医師が総合的に判断します。

在宅酸素療法にはどのような効果がありますか?

体に必要な酸素を補う

慢性呼吸不全では、通常の空気を吸っていても血液中の酸素を十分に保てないことがあります。

酸素を吸入することで、血液中の酸素を適切な状態に保ち、全身の臓器に酸素を届けます。

息切れや体への負担を軽減する

不足している酸素を補うことで、歩行、着替え、トイレ、食事、入浴などの際に感じる息切れが軽くなることがあります。

ただし、息切れには低酸素以外の原因も関係するため、酸素を吸えばすべての息切れがなくなるわけではありません。

心臓への負担を軽減する

低酸素状態が続くと、肺の血管が収縮し、心臓、特に右心系に負担がかかることがあります。

適切に酸素を補うことで、低酸素による心臓や肺血管への負担を軽減できる可能性があります。

日常生活や外出を続けやすくする

在宅酸素療法は、安静にするためだけの治療ではありません。

携帯用の酸素機器を使用すれば、通院、散歩、買い物などの外出も可能です。環境再生保全機構も、酸素機器を使用することで不足した酸素を補い、家庭生活を続けることができると説明しています。

在宅酸素療法で使用する機器

酸素濃縮装置

ご自宅で主に使用する機器です。

室内の空気を取り込み、酸素を濃縮して患者さんへ供給します。家庭用電源で作動するため、停電時には予備の酸素ボンベなどが必要です。

携帯用酸素ボンベ

通院、散歩、買い物などの外出時に使用します。

専用のカートやリュックなどを使って持ち運びます。酸素流量や呼吸同調装置の使用状況によって使用可能時間が変わるため、外出前に残量を確認することが大切です。

酸素は何リットル吸えばよいですか?

在宅酸素療法では、医師が患者さんごとに酸素流量と使用時間を処方します。

例えば、次のように生活場面によって異なる流量が指示される場合があります。

  • 安静時
  • 歩行・運動時
  • 入浴時
  • 就寝時

酸素は、多く吸えば吸うほどよいわけではありません。

特にCOPD、肺結核後遺症、神経筋疾患などで二酸化炭素がたまりやすい患者さんでは、酸素を必要以上に増やすことで、二酸化炭素がさらに蓄積する可能性があります。

強い眠気、頭痛、意識がもうろうとするなどの症状が現れることもあるため、自己判断で酸素流量を変更してはいけません。

息苦しいからといって酸素流量を勝手に上げたり、体調がよいからといって酸素を中止したりせず、必ず医師から指示された流量を守りましょう。

酸素をつけたまま外出や入浴はできますか?

患者さんの状態や医師の指示によりますが、多くの場合、酸素を使用しながら外出や入浴を行うことができます。

外出前には、次の点を確認しましょう。

  • 酸素ボンベの残量
  • 外出予定時間
  • 予備ボンベの必要性
  • 鼻カニューラやチューブの状態
  • 酸素供給業者の連絡先
  • 医療機関の緊急連絡先

入浴は体に負担がかかり、酸素濃度が低下しやすい動作です。医師から入浴時の酸素流量を指示されている場合は、その流量を守ってください。

飛行機を利用する場合は、機内環境の影響により酸素不足が強くなる可能性があります。また、利用できる機器や手続きは航空会社ごとに異なります。

旅行が決まった段階で、早めに主治医と航空会社へ相談しましょう。

在宅酸素療法中は火気厳禁です

酸素そのものが燃えるわけではありませんが、酸素には物を燃えやすくする性質があります。

高濃度の酸素を吸入しているときに、たばこやライターなどの火気を近づけると、鼻カニューラ、チューブ、衣類、寝具などに燃え移り、重大なやけどや火災につながる危険があります。

注意が必要な火気

  • たばこ・電子たばこ
  • ライター・マッチ
  • ガスコンロ
  • ストーブ
  • ろうそく
  • 線香
  • 花火
  • その他の裸火

厚生労働省とPMDAは、酸素濃縮装置などの使用中は、装置の周囲2m以内に火気を置かないこと、特に酸素吸入中は絶対に喫煙しないことを注意喚起しています。

患者さん本人だけでなく、ご家族や来客にも周囲での喫煙や火気の使用を控えてもらう必要があります。

参考:厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」

停電や災害に備えましょう

酸素濃縮装置は電気で作動するため、停電すると使用できなくなる可能性があります。

日頃から次の点を確認しておきましょう。

  • 予備の酸素ボンベの保管場所
  • 酸素ボンベへの切り替え方法
  • ボンベを使用できる時間
  • 酸素供給業者の緊急連絡先
  • 医療機関の連絡先
  • お薬手帳・在宅酸素療法の処方内容
  • 避難場所と避難方法
  • スマートフォンなどの充電手段

災害時には、道路の寸断などによって酸素ボンベの配送が遅れる可能性があります。

ご自身が在宅酸素療法を行っていることを、ご家族、ケアマネジャー、訪問看護師、地域の支援者などと共有しておくことも重要です。

在宅酸素療法を導入するまでの流れ

1.呼吸器内科を受診する

息切れや酸素濃度低下の原因を調べます。

単に酸素を処方するだけではなく、慢性呼吸不全の原因となっている病気を診断し、治療することが重要です。

2.必要な検査を行う

酸素飽和度、動脈血ガス分析、歩行時の酸素状態、呼吸機能、胸部画像などを確認します。

3.在宅酸素療法の適応を判断する

検査結果、原因疾患、症状、日常生活の状況などを総合的に評価します。

4.酸素流量と使用時間を決める

安静時、運動時、入浴時、睡眠時などに必要な酸素流量を決定します。

5.酸素供給業者が機器を設置する

ご自宅に酸素濃縮装置を設置し、患者さんやご家族へ機器の操作方法、安全上の注意、緊急時の対応などを説明します。

6.定期的に呼吸器内科へ通院する

在宅酸素療法を開始した後も、定期的な診察が必要です。

環境再生保全機構では、医師による診察・検査、酸素療法の処方、機器の設置、定期診察という導入の流れが示されています。

在宅酸素療法には健康保険が適用されますか?

医師が診察や検査を行い、在宅酸素療法の適応基準を満たしていると判断した場合には、健康保険が適用されます。

自己負担額は、年齢、健康保険の負担割合、所得区分、ほかの診療内容などによって異なります。

患者さんによっては、高額療養費制度、身体障害者手帳、自治体の医療費助成制度などを利用できる場合があります。詳しくは医療機関、加入している健康保険、自治体の窓口などへご確認ください。

慢性呼吸不全は酸素療法だけで治療するものではありません

在宅酸素療法は、慢性呼吸不全に対する重要な治療ですが、酸素を吸入するだけで原因となる病気が治るわけではありません。

原因疾患に応じて、次のような治療を組み合わせます。

  • 吸入薬や内服薬
  • 禁煙治療
  • 呼吸リハビリテーション
  • 運動療法
  • 栄養管理
  • 感染症の予防
  • インフルエンザ・肺炎球菌などの予防接種
  • 非侵襲的陽圧換気療法
  • 心不全などの併存疾患に対する治療

特に慢性呼吸不全では、息切れを避けるために活動量が減り、筋力が低下して、さらに息切れしやすくなるという悪循環に陥ることがあります。

医師と相談しながら、無理のない範囲で体を動かし、体力や筋力を維持することも大切です。

在宅酸素療法を始めた後も定期通院が必要です

呼吸器内科の定期診察では、次のような点を確認します。

  • 安静時・歩行時の酸素飽和度
  • 息切れ、咳、痰の変化
  • 酸素の使用時間
  • 酸素流量が適切か
  • 機器を安全に使用できているか
  • 鼻や耳周囲の皮膚トラブル
  • 足のむくみや体重増加
  • 呼吸機能や胸部画像の変化
  • 吸入薬などの使用状況
  • 栄養状態や筋力の低下
  • 二酸化炭素が蓄積していないか

病気の悪化、肺炎などの感染症、心不全などによって、必要な酸素量が変化することがあります。

体調に変化があった場合は、次回の予約日まで待たず、早めに医療機関へ相談しましょう。

このような症状がある場合は早めに受診してください

次のような症状は、慢性呼吸不全の悪化、肺炎、COPDの増悪、心不全などの可能性があります。

  • 以前より息切れが強くなった
  • 安静にしていても息苦しい
  • 指示された酸素を使用してもSpO₂が低い
  • 咳や痰が急に増えた
  • 痰が黄色や緑色になった
  • 発熱がある
  • 胸の痛みがある
  • 足のむくみが強くなった
  • 急に体重が増えた
  • 強い頭痛や眠気がある
  • 意識がもうろうとする
  • 唇や指先が紫色になっている

強い呼吸困難、意識障害、激しい胸痛などがある場合は、緊急性が高い可能性があります。速やかに救急車を要請してください。

慢性呼吸不全・在宅酸素療法は呼吸器内科へご相談ください

在宅酸素療法は、酸素を吸うこと自体が目的ではありません。

慢性呼吸不全によって不足している酸素を適切に補い、心臓や全身への負担を軽減しながら、その方らしい生活を続けるための治療です。

谷四かわい内科クリニックでは、日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医が、次のような疾患による慢性呼吸不全や在宅酸素療法について診療しています。

  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)
  • 間質性肺炎・肺線維症
  • 気管支拡張症
  • 肺結核後遺症
  • 肺がん
  • 肺高血圧症
  • その他の慢性呼吸器疾患

「歩くと息切れがする」
「自宅で測定すると酸素飽和度が低い」
「退院後の在宅酸素療法を継続して診てもらいたい」
「酸素流量や携帯用酸素ボンベについて相談したい」
「慢性呼吸不全と言われたが、今後の治療が分からない」

このようなお悩みがある方は、大阪市中央区・谷町四丁目駅近くの谷四かわい内科クリニックへご相談ください。

患者さんの呼吸状態、原因となる病気、生活環境を確認したうえで、在宅酸素療法の導入や継続管理をサポートいたします。

まとめ

慢性呼吸不全とは、肺などの病気によって、酸素を十分に取り込めない状態や、二酸化炭素を十分に排出できない状態が長く続くことです。

「在宅酸素療法(HOT)」は、慢性呼吸不全などによって不足している酸素を、自宅や外出先で補うための治療です。

主にCOPD、間質性肺炎、肺結核後遺症、気管支拡張症、肺がん、肺高血圧症などが原因となります。

在宅酸素療法を安全に続けるためには、次の点が大切です。

  • 医師から指示された酸素流量を守る
  • 自己判断で酸素流量を変更しない
  • 酸素吸入中は絶対に喫煙しない
  • 酸素機器の周囲2m以内に火気を置かない
  • 停電や災害に備える
  • 呼吸器内科へ定期的に通院する
  • 慢性呼吸不全の原因となる病気の治療を続ける

息切れや酸素濃度の低下が気になる方、慢性呼吸不全や在宅酸素療法について不安がある方は、早めに呼吸器内科へご相談ください。

大阪市中央区の「谷四かわい内科クリニック」は、大阪メトロ「谷町四丁目」駅6番出口から徒歩2分、谷町六丁目駅から徒歩10分、天満橋駅から徒歩12分のところにあり、電車でのご来院が便利です。
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