睡眠時無呼吸症候群（SAS）は睡眠中に何度も呼吸が止まる疾患で、大きないびきを伴うことが特徴です。無呼吸により脳や臓器が低酸素状態となり、日中の強い眠気や集中力低下を引き起こすほか、高血圧や心疾患などのリスクも高まります。
診断には、睡眠中の心電図や脳波などを調べるポリソムノグラフィー（PSG）検査が用いられ、治療法は気道を広げて酸素を送るCPAP療法が一般的です。治療が遅れると突然死につながる可能性もあるため、早めの検査と治療が重要です。

睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸の2種類があります。それぞれの特徴についてご紹介します。

睡眠時無呼吸症候群の診断には、体内の酸素飽和度を測定する「簡易検査」と、簡易検査が陽性だった場合に行う「本検査」があります。本検査は、心電図や脳波などを調べるポリソムノグラフィー（PSG）検査を入院して実施するのが一般的です。
当院では検査後に症状がある場合は自宅でご利用いただくCPAPをご提供しています。その後1ヶ月に1回のペースで受診いただきます。
また、簡易PSGの貸し出し（1泊2日）が可能なため、入院せずに検査を受けていただけます。入院検査に比べて時間や費用の負担を軽減できますので、お気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の治療はCPAP療法が基本ですが、軽度から中等度の患者さんにはマウスピース療法も有効です。どちらの治療でも効果が見られない重症の方には、手術が検討されることもあります。
また、症状の程度に関わらず、肥満を解消し、健康的な生活習慣を維持することが重要です。

睡眠時無呼吸症候群は肥満が原因となることが多いため、運動や食事療法による減量が有効です。脂肪が減少すると、睡眠中も気道が圧迫されにくくなり、呼吸が改善されます。
効率よく脂肪を減少させるためには、有酸素運動を中心に週数回の運動習慣を取り入れることが推奨されています。また、高カロリーの食べ物を控え、バランスの取れた食事を心がけることも大切です。

CPAPは、睡眠中に一定の圧力をかけた空気を気道に送ることで、気道が閉塞するのを防ぎ、正常な呼吸をサポートする医療機器です。睡眠時にCPAPのマスクを装着することで、いびきや無呼吸が改善されて酸素供給が安定します。
CPAP療法は、特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群に効果的です。当院では、簡易PSG検査で陽性となった方にはご自宅にCPAPを設置していただき、月に1回程度の通院で治療効果を確認していきます。

マウスピース療法は、睡眠時にお口にマウスピースを装着して顎を固定し、気道を広げることで無呼吸やいびきを軽減する治療法です。特に軽度から中等度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に適しています。
マウスピースは歯型に合わせて製作されるため違和感が少なく、出張や旅行の際にも簡単に持ち運べます。そのため、CPAP療法に抵抗がある方にも続けやすい治療法です。

手術治療は、CPAP療法やマウスピース療法で効果がない場合に検討されます。手術にはいくつかの方法があり、上下の顎を前方へ移動させて気道を広げる「上下顎同時前進術」、口蓋垂（のどちんこ）と周辺組織を部分的に切除する「口蓋垂軟口蓋咽頭形成術（UPPP）」、下顎とオトガイ舌筋（舌の付け根）を前方へ移動させる「オトガイ舌筋前進術」などが代表的な術式です。

睡眠時無呼吸症候群の改善には、生活習慣の見直しが重要です。気道を狭くする大きな要因となる肥満を解消するために、適度な運動やバランスの取れた食事が欠かせません。
また、気道の筋肉を弛緩させる飲酒や、気道の炎症を引き起こす喫煙もなるべく控えましょう。
そのほか、仰向けで寝ると舌が気道を塞ぎやすくなるため、眠るときは横向きの姿勢を意識することも効果的です。